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2019.06.06 離婚・男女問題

判例の紹介~不貞相手への離婚慰謝料請求を原則否定した事例(最判平成31年2月19日)

1 最判平成31年2月19日判決の概要

夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない。

不法行為責任を負うのは、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものとと評価すべき特段の事情があるときに限られる。

 

2 事案の概要

平成6年3月にXとAは入籍、同年8月に長男、平成7年10月に長女をもうけた。

XはAと同居していたが、仕事のため帰宅しないことが多く、AがYの勤務先に入社した平成20年12月以降は、Aと性交渉がない状態になっていた。

Yは、平成20年12月ころAと知り合い、平成21年6月移行、Aと不貞行為に及ぶようになった。

Xは、平成22年5月ころ、YA間の不貞を知る。Aはそのころ、Yとの不貞関係を解消、Xとの同居を続ける。

Aは、平成26年4月ころ、長女大学進学を機にXと別居した。

Xは、平成26年11月ころ、Aに対して離婚調停を申立て、平成27年2月にAとの調停離婚が成立する。

 

3 前提となる法理論

最判昭和54年3月30日は、配偶者の第三者への不貞慰謝料の請求を次のように肯定しています。「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方のはいい愚者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある。」

 

4 最判平成31年2月19日の内容

夫婦が離婚するに至るまでの経緯は、当該夫婦の諸事情に応じて一葉ではないが、競技場の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。

夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。

第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該団者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない。

 

5 問題の所在

不法行為の消滅時効は加害行為を知ったときから3年であり(民法724条)、本件では、「不貞」慰謝料については、時効が完成していました。

これまで離婚慰謝料が第三者に認められるかどうかは明らかでなかったところ、最判平成31年2月19日は、第三者に対する離婚慰謝料を原則否定しました。

たしかに、婚姻関係が解消されるかもしれない間、いつもでも確定しないのでは、消滅時効期間を3年とした趣旨に反し、第三者の立場を不安定にさせますので、その意味では妥当な判決に思えます。

 

 

 

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