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2020.06.16

個人間の金銭の貸借の貸主側の債権回収は難しい理由

(1)個人間で(知人などに)金銭を貸し借りし、相手方(借主側)が金銭を返済してくれないとして、ご相談される場合があります。しかし、貸主側の債権回収は法的にも、事実上も難しいことがよくあります。

(2)法的な問題として、貸主側が借主側に対して請求する場合、交渉ですんなり返してくれるのであれば、何ら問題ありませんが、交渉しても相手方が返してくれない場合には、裁判所に訴訟提起する場合、法的には①金銭の交付と②返還の合意の二つの要件を主張し、立証する必要があります。

①金銭の交付は、相手方に対する通帳の振込み履歴等で立証することができますが、金銭を引き出して、相手方に現金で渡していた場合、相手方が現金の受領を否定した場合、立証はとたんに難しくなります。

②返還の合意は、例えば借用証などで「返還します」という文言があれば立証は容易です。しかし、口頭での「返す」という合意しかない場合、相手方が口頭の合意を否定してしまいますと、立証はとたんに難しくなります。

(3)以上の法的な問題をクリアし、「お金を返せ」という判決がでたとしても、事実上の問題として、相手方が「お金がない」場合にも債権回収が難しくなります。裁判所は、代わりに取立てくれません。別に「強制執行」という手続きが必要になります。しかし、強制執行も相手方に差し押さえる財産(預貯金や不動産)がない場合は「絵に描いた餅」となります。大体において、交渉で返してくれない方は、お金がない方がほとんどです。給与を差し押さえることはできますが、そのためには相手方が勤めているところを知る必要がありますし、給与全額は差し押さえられず、4分の1までしか差し押さえることはできません。

また、給与を差し押さえたところ、相手方が破産手続きをしてくる場合があります。破産手続の免責手続を経ると、借金を免除されるので、せっかく判決を得てもそれに基づいて差し押さえることはできなくなります。

(4)以上述べてきた通り、個人間でいくら知人だと言っても、お金の貸し借りはされないほうが良いと思います。どうしても貸す場合でも不動産担保(不動産に抵当権をつける)や人的担保(保証人)を書面で作成しないと債権回収は難しくなります。知人間に貸し借りする前に契約書などの書面作成を弁護士にご相談ください。

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