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2017.10.27 遺産相続

遺産・相続問題について知っておきたい5つのこと

1 相続が「争」続となったとき

人が亡くなると故人の資産や負債の相続が問題となります。

相続は単なる財産の承継ではなく、故人の人生や想いを引き継ぐことでもあります。「世話になった人に感謝の気持ちを表したい」「困難な条件を抱える子や孫の生活の足しにして欲しい」「先祖から受け継いだ財産を大切に子孫に守り伝えて欲しい」「これからも兄弟仲良くして欲しい」等々、故人の想いは様々です。

ところが、故人の想いをめぐって相続人の意見が対立すると、遺産分割の話し合いがまとまらないまま、兄弟(姉妹)間で相続争いが起ころことはよくあります。それぞれの配偶者までが話し合いに入り込んできて、対立は感情的になり解決が難しくなることも珍しくありません。

このような遺産をめぐる争いを防いだり、故人の想いを伝えるために遺言書を作成しておくことは有効です。

しかし、せっかく作った遺言書が不完全な場合、その遺言書の効力や文言の解釈が相続人の争いの原因となることもあります。そのようなことにならないためには是非、遺言書の内容や文言についてご相談下さい。

遺産の分割をめぐって相続人間に意見の対立がある場合には、それが紛争に発展しないように、できるだけ早期に、冷静かつ合理的な解決をするということが求められます。

 

2 遺産分割とは

遺産分割は、相続人を確定し、法定相続分に応じて相続財産を分割します。相続人は、戸籍をみれば、わかりますのでこの点で問題になることはほとんどありません。

 

ところが、遺産分割の対象になる相続財産が何かについて問題になることがあります。遺産分割の対象にならないとすると、裁判所における調停の場で、争うことができないことになります。

 

遺産分割の対象になるのは、預貯金、現金、不動産、株式、有価証券等です。少し前までは預貯金は遺産分割の対象にならないとされていましたが、平成28年12月19日に最高裁大法廷は、判例を変更し、預貯金を遺産分割の対象になるとしました。

 

これに対して、例えば賃貸不動産の賃料などは遺産分割の対象にならないとされています(平成17年9月8日)。遺産分割の調停で話し合うまでもなく、当然に法定相続人に法定相続分に応じて分割されるということになります。

 

 

3 葬式費用や供養代

 

遺産分割の調停でよく問題となりますが、被相続人(故人)の葬式費用や供養代はどうなるでしょうか。

 

相続財産から葬式費用や供養代を引いて考えるのでしょうか。

 

意外なことに裁判例では、葬式費用や供養代を相続財産から引いて考えるとはしていません。葬式費用や供養代は、祭祀を主宰する者すなわち喪主が負担するものとしております。喪主がせっかく故人のために葬式をしてもそれを全額負担するので、不公平に思う方もいるかもしれませんが、現在のところ裁判例ではこのような考え方がされています。もちろん、相続人全員が合意すれば、葬式費用や供養代を相続財産から引いて計算することはできます。

 

 

4 生命保険

 

生命保険は原則として受取人固有の財産となり、たとえ契約者が被相続人(故人)であっても、受取人が相続人なっていれば、受取人固有の財産となり、遺産分割の対象となりません。

 

もっとも、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が相続人間の公平の見地から到底是認することができないほどに著しい場合には、生命保険を特別受益の場合に準じて相続財産に持ち戻すべきとされています(最高裁平成16年10月29日)。どのような場合に、保険金を相続財産に持ち戻すべきかはケースバイケースですので、判断に悩まれる場合は弁護士にご相談ください。

 

 

5 相続人の一人が生前に被相続人から多額の生前贈与をもらっていた場合

 

それでは、さらに相続人の一人が生前に被相続人から多額の生前贈与をもらっており、その額がその相続人が相続する法定相続分を超えていましたが、その相続人は法定相続分どおりの遺産を求めている場合はどうなるでしょうか。

 

この場合、相続人に対する生前贈与が「特別な受益」にあたれば、特別受益を相続財産に持ち戻して(相続財産とみなして)考えます。

 

たとえば、相続人がXさんとYさんの2人、法定相続分が同比率、相続財産1000万円、Xさんに500万円の生前贈与があった場合です。

 

単純に相続財産を分割するとそれぞれ500万円ずつとなりますが、Xさんは生前贈与の分と合わせると1000万円となり、Yさんとの間で不公平ということになります。

 

この場合、Xさんに対する生前贈与を相続財産に持ち戻し、1500万円として分割することになります。Yさんは750万円を、Xさんは250万円を受け取ることになります。Xさんは生前に500万円をもらっているので、合わせれば750万円となり、XさんとYさんに公平な分割ができることになります。

 

特別受益にあたるかどうかは、いろいろな要素を総合考慮して判断します。また、特別受益がされたことを関係づける資料がないと裁判所では認められないことがあります。判断に悩まれる場合は弁護士にご相談ください。

 

特別受益を主張する場合、相手方は遺産をもらえなくなったり、減少するので、調停・審判においては否定することがしばしばあります。そのときは、資料をもって、特別受益があったことを主張しないと、主張するだけでは、特別受益は認められません。また特別受益は、しばしば10年以上前のことが多いので資料が残っていないことがあります。特別受益が認められる資料かどうかは専門家である弁護士に早めにご相談いただいて保管していただくことが大切です。

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