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2019.03.28 一般民事事件

裁判例の紹介~保育所からの園児の声などによって精神的苦痛を受けているとして慰謝料と防音設備の設置を求めた訴訟(原告敗訴)~

幼稚園や保育所、果ては住宅の相隣関係においても、騒音問題は常にいつ何時問題となる可能性があります。

法律相談などでも、年に何件かご相談を受けることがあります。

騒音問題について、最近の裁判例を紹介させていただきます。

神戸地裁平成29年2月9日判決(控訴審:大阪高裁平成29年7月18日、最高裁:上告棄却)では、神戸市内の認可保育所から発せられる騒音をめぐり、近隣に居住する男性が精神的苦痛を受けたとして慰謝料と防音設備の設置を求めた事案です。

裁判所は、騒音による被害が違法な権利侵害になるかどうかは、「侵害行為の態様、侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、当該施設の所在地の地域環境、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の諸般の事情を総合的に考察して、被害が一般社会生活上受任すべき程度を超えるものかどうか」により決められるとして、「騒音基準によれば,本件地域における昼間の時間帯の騒音基準は,騒音計の指示値が不規則かつ大幅に変動する場合には,騒音源である特定工場等の敷地境界線で測定した騒音レベルが時間率騒音レベル(LA5)で60dBを超えるか否かにより評価すべきとされている(前記第2の3(2)ウ)ところ,本件鑑定によれば,本件保育園敷地境界線に設定した測定点①では,騒音計の指示値が不規則かつ大幅に変動し,その指示値の最大値も一定とは認められないことから,騒音の大きさは時間率騒音レベル(LA5)により評価するのが相当な場合に当たると考えられ,園児が園庭で遊んでいる時間帯では,時間率騒音レベル(LA5)の代表値の平均が76dB(小数点以下を四捨五入した整数値)であることが認められ,同値は,騒音基準を上回るものである」としましたが、「本件保育園から発生する騒音は,主に園児が園庭で遊戯する約3時間であって,通常保育の時間(午前8時から午後5時半まで)において断続的に発生するものではなく,原告において環境基準が前提とする昼間の時間帯の屋内騒音レベル45dBを下回る騒音レベルを維持することを必要とする特別の事情があるとは認められない上,被告は,本件保育園の設置に際し,本件保育園の近隣住民に対する説明会を1年ほどかけて行い,その間,本件保育園から生じる騒音の問題に係る原告を含めた近隣住民からの質問・要望等に対して検討を重ね,既設の保育園で測定した騒音結果から本件保育園の騒音の推定値を算出した上で,遮音性能を有する本件防音壁を設置し,一部の近隣住民に対して被告の負担において二重サッシに取り換えることを提案・合意するなどして騒音対策を講じるよう努めてきたこと,最終的に原告とは折り合いがつかなかったものの,被告側から原告宅敷地境界線における防音対策による問題解決の提案がされたことが認められる。以上の事情を考慮すると,原告が本件保育園からの騒音により精神的・心理的不快を被っていることはうかがえるものの,原告宅で測定される本件保育園の園庭で遊戯する園児の声等の騒音レベルが,未だ社会生活上受忍すべき限度を超えているものとは認められず,不法行為を基礎づける程度の違法があるということはできない」として、原告敗訴の判断をしています。

この裁判では、保育所事業者が、保育園開園まで、近隣住民に対してどのような措置を講じてきたのかという点が慎重に検討され、受任限度の判断に当たっては保育所事業者の近隣住民に対する誠実性も重要な考慮要素としています。

この裁判例は、保育所から発生する騒音が常に受任限度を超えるものではないと判断したものではありません。

したがって、保育所解説前後を通じて保育所が周辺住民に対して不誠実な態度をとっていた場合には、保育所の騒音をめぐる裁判において、保育所が敗訴する可能性もあることになります。

本件でも判決の内容をみると、保育所側が弁護士を伴って近隣住民に対する説明会を開催しています。

もし騒音問題でお困りの際には弁護士にご相談ください。

 

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